交通事故 脳挫傷高次脳機能障害後遺障害7級 嗅覚脱失12級 3562万円で解決した事例

(令和4年8月20日原稿作成)

 

交通事故の状況

トラックに衝突された歩行者が被害者でした。

被害者は事故後すぐ病院に救急搬送されました。脳挫傷、体の多発骨折を受傷しました。

救急搬送先の病院で入院することになりました。

 

当法律事務所の無料相談

 

事故から約1ヶ月後、被害者のご両親が当法律事務所の無料相談にお越しになりました(被害者はまだ入院中でした。)。

 

過失割合も問題になるケースでしたので、まずは事故状況をお聞きして必要なアドバイスを行いました。

 

けがについては、どの部位をどの程度受傷したのか、どのような症状があるのかなどをご両親からお聞きし、どういった治療が行われることが予想されるかなどのアドバイスを弁護士金田が行いました。

 

交通事故直後から被害者に意識障害があったこともわかりました。

 

高次脳機能障害 ~本人も気づかず、家族もわかりにくい症状~

 

脳挫傷については、画像上はっきりあるということでした。頭部については受傷後まもなくCT検査もMRI検査も実施されていました。

 

被害者に意識障害があり、画像上、脳挫傷の所見がある場合、早い段階からいくつか注意をしなければならないことがあります。

 

 

●まずは、高次脳機能障害(精神機能障害)の症状に注意する必要があります。

高次脳機能障害の代表的症状は以下のとおりです。

物忘れがある

怒りっぽくなる、気分に波がある

何度も同じことを聞いたり話したりする

集中力や注意力が低下する

疲れやすくなる

これらの症状は、本人に症状が出ているという認識に乏しく、家族も気づきにくいものです。事故からまだ1ヶ月程度しか経っていないこともあり、弁護士金田からは、事故前の被害者と比較して、上記のような症状がないかどうか、ご家族がよく被害者を観察していただく必要がありますとお伝えしました。

脳挫傷は高次脳機能障害のような精神機能障害だけでなく、身体性機能障害(手足の麻痺)が発生するおそれもありますので、この点にも注意が必要になります。

 

 

●次に、脳挫傷を受傷すると、てんかん発作(けいれんや意識に障害だ出たりします。)が出てくる場合があります。けいれん発作がひどくなると生命に危険が及ぶおそれもあります。

もし、このような発作がでた場合にはすぐにかかっている医療機関を受診する必要があります(抗てんかん薬を処方されて内服する等の治療が行われます。)。

 

 

●さらに、脳挫傷を受傷すると、感覚受容器(体のまわりの環境情報を感じて認識する体の部位のこと。わかりやすくいうと、目、耳、鼻、口のことです。)に障害が出ることがあります。

具体的に言いますと、視力障害、複視、半盲症、聴力障害、耳鳴り、嗅覚障害、味覚障害などが気になる障害です。

脳には12対の神経があり、これらの神経のうち、視覚、聴覚、嗅覚、味覚に関係する神経があります。もし、脳を損傷した場合、損傷の程度によってはこれらの神経にも影響が及ぶおそれがあり、それゆえ、視覚、聴覚、嗅覚、味覚にも影響が出てくるおそれがあります。

被害者のご両親には、脳挫傷の程度にもよりますが、これらの障害が発生するおそれがあるので、よく被害者をみていただく必要がある点もお伝えしました。

 

 

●頭部や脳にけがをした場合、当然、頭痛もよくある症状です。被害者に頭痛があるかどうかについてもよく気にかえてあげて欲しいと弁護士金田からお伝えしました。

初回は相談だけで終了しましたが、もし、何か気になることがあれば、当法律事務所にご連絡をいただくことをお伝えしました。

 

その後の経過 ~高次脳機能障害の通院と嗅覚脱失~

 

被害者は、その後、別の病院にリハビリで転院入院となりました。頭痛、怒りやすい、物忘れ、集中力低下、注意力低下という症状があり、退院後も、高次脳機能障害の通院治療を継続することになりました。

 

被害者は10代(女性)の高校生で、復学後の学業成績はおもわしいものではありませんでした。

 

また、被害者にはてんかん発作が発生し、かかっておられた脳神経外科を受診し、抗てんかん薬の処方を受けました。

 

さらに、被害者はにおいを全く感じなくなりました(嗅覚脱失)

 

 

嗅覚脱失の症状固定

 

被害者のご両親から、嗅覚障害については症状固定(=治療を続けても症状が良化する見込みがなくなった状態のことです。)となり、後遺障害診断をすることになったとの連絡がありました。

 

嗅覚障害について自賠責保険の後遺障害等級の判断を受けるには、T&Tオルファクトメーターという嗅覚検査(5つのにおいを嗅ぎ、においがわかるかどうか、どのようなにおいかがわかるかどうかを確認していく検査のことです。)を実施していただく必要がありますので、この検査の実施について担当医の先生とご相談いただくことを弁護士金田からアドバイスをしました。

 

ただ、通院先の病院にはT&Tオルファクトメーターを実施しておられませんでしたので、この病院からの照会先の病院にて実施されることになりました。

 

検査結果表の見方についてもご両親からお問い合わせがありました。内容をお聞きし、値が5.8となったことから、検査数値のうえでは嗅覚脱失の判断になると考えられる旨お伝えしました。

これをもとに耳鼻咽喉科にて後遺障害診断書が作成されました。

※T&Tオルファクトメーターの検査結果の見方の詳細についてはここでは省略いたします。

 

 

高次脳機能障害の症状固定 ~弁護士受任~

 

その後、高次脳機能障害も症状固定の時期がやってきました。

被害者のご両親から、最後に頭部のMRIを撮って、脳神経外科にて後遺障害診断をすることになったとご連絡をいただきました。この時期に弁護士金田がご依頼をお受けすることになりました。

 

●被害者の日常生活状況については弁護士金田がご両親とお会いし、お聞きし、書式にまとめていただき、脳神経外科の診察時にもご持参いただき、担当医の先生にお伝えいただくようにしました。

●後遺障害診断書のほか、意識障害に関する所見の書式、神経障害に関する医学的意見の書式も用意して診察にご持参いただくようにしました。

●被害者の学校生活の状況についても担任の先生に記載をお願いしてもらうよう言いました。

後遺障害診断書などの医学的資料は、担当医の先生が作成され、ご両親に交付され、弁護士金田がお預かりしました。画像のCD-Rも弁護士金田がお預かりしました。

 

意識障害…くわしい数字は掲載を控えますが、意識清明になったのは事故から8日後という記載になっていました。

頭部画像…弁護士金田が確認しましたところ、初診時の画像上も、症状固定直前に撮った最終のMRI画像上も、両側前頭葉に脳挫傷痕がはっきりと残っていました。
     
※嗅覚脱失も脳の損傷がどうも関係してそうだと思いました。

 

後遺障害等級認定申請 ~併合6級が認定されました~

 

後遺障害等級認定申請は弁護士金田が代理して行いました。

その結果以下のとおり認定されました。

高次脳機能障害…後遺障害7級4号

嗅覚障害…後遺障害第12級相当

上記の場合、ルール上、重い方の等級を一つ繰り上げることになるので、後遺障害併合6級という判断になります。

 

高次脳機能障害については、自賠責保険は、頭部画像上、脳損傷後の脳挫傷痕の残存が認められ、受傷当初から意識障害が継続して認められることやその後の症状経過を踏まえ、交通事故に起因する脳外傷による高次脳機能障害が残っていると判断されました。

高次脳機能障害の程度については、薬を服用しないと感情の起伏が激しいことや日常生活状況報告上、集中力や注意力の低下、怒りっぽいという報告があったこと、てんかん発作があったこと等により神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの(後遺障害7級4号)に該当すると判断されました。

※事故から1ヶ月弱の時期に被害者に行われた神経心理学的検査(わかりやすくいえば知能検査のようなもので、高次脳機能に問題がああるかどうかを見る検査です。)の結果はほぼ問題はなかったのですが、上記認定に至りました。

 

後遺障害併合6級の認定により、自賠責保険会社から1275万円の支払を受けることができました。

 

最終の損害賠償交渉

 

相手方の任意保険会社に対し、最終の追加請求をしましたが、まとまらず、被害者、ご家族の意向により交通事故紛争処理センターにあっせんを申し立てました。

 

交通事故紛争処理センターでは2287万円(千円以下省略しております。)の支払を受けることで合意に至りました。

 

自賠責保険からの1275万円の支払いとあわせて、弁護士加入後合計3652万円の支払いを受けたことになりました。

 

被害者側の過失は40%ということになりましたが、後遺障害逸失利益は、451万円の年収に67%の労働能力喪失が67歳まで続くことを前提とする金額になりました。

 

ひとこと

被害者が重症を負ったケースでは、ご家族のサポートが必要になります。

本件のご家族は、当法律事務所に早めに初回相談にお越しいただき、その後も何度か当法律事務所にご連絡・ご相談を受けられたことで、漏れを防ぐことができ、上記解決に至りました。

重症のケースに限ったことではありませんが、交通事故でけがをされたときは、できるだけお早めにご相談ください。